27 Giu Diaryby Shigeru Saito 動物としてのヒト 3:天球の姿 天体の運行の観察は、自分自身の肌身で感じる気温や湿度のほかに、季節を知るための決定的な手掛かりになったに違いない。ここで大切なことは、天球の姿を把握することである。その容姿を見極められなければ、季節や天候を知ることは能わない。天球の容姿は星座によって描かれた。描かれた主人公たちは、星座同士にまつわる物語とともに後世に受け継がれ、季節の把握という恩恵を受けた我々の祖先は、食料の栽培収穫を限りなく発展させていった。天球から生まれたこれら主人公たちの物語は、夜空を見上げて過ごすなかで語り継がれ、そしてまた、洞窟内の住まいの天井に直接、季節を巡る天球の物語を描き、物語り、母から子へと語り継がれたのだろう。アルタミラの洞窟にある壁画は、洞窟内の壁ではなく、天井に描かれている。壁に描かれていたものは、おそらくは地上で目にするものの風景画、そして天井に描かれていたものは、天球に住まう星座の主人公たちの風景画だったのかも知れない。もしかしたら、この、描くことと言伝えとが同時進行した、物語を描き、物語る能力こそが、ブローカ野とウェルニッケ野を醸成したのではないだろうか。時空を超える文字の発明に先立って、絵画と言伝えがその準備をしていたのだ。石器時代に生きた我々の祖先の子供たちは、毎夜、寝床でお母さんの語る天球の物語にワクワクしていたに違いない。 日々の考察 Share: Facebook Twitter LinkedIn Pinterest